車で出かける際、熱源として電気を利用するとなると、いわゆるDC/ACインバータの利用を思いつきます。カーバッテリーの直流(DC)を電力供給源として、家庭用電力と同じ100ボルトの交流(AC)に変換する機器で、カー用品店などでも売られています。
このDC/ACインバータの売り文句では
家庭電化製品が車で使える
ということが謳われてます。特に最近はケータイの充電や、ノートPCの電源としての活用のためにも使われているようです。
一般的にシガーライターのソケットから電源をとるものが手軽ですが、このタイプのものだと200W程度までの出力のようです。
さて、車内でお湯を沸かすことを想定して考えてみます。5人分の食事ですので、2リットルを沸かすことにします。
水の沸騰点は摂氏100度。そして、加熱を開始するときの水温を摂氏10度とします。つまり、2リットルの水について90度温度を上げる加熱を考えます。
遠い過去に勉強した知識を久しぶりに思い出しながら計算してみますと、
2リットル(=2000グラム)の水を、90度温度上昇させる熱量は、
2000(グラム)×90(度)=180000(カロリー)
となります。これだけの熱量を水に加える訳です。
そして、この熱を加える手段として、今回はIHヒーターを使うことにします。普通の電熱器は可燃物だらけの車内で使うのはちょっと怖いし、酸欠の心配もなく熱効率が良いIHヒーターの方がベターな選択だと考えたのです。
計算のうえで、このIHヒーターの熱効率を80パーセント(=0.8)と考えます。この数値は、IHヒーターのメーカーが出している熱効率の値に近い数字です。つまり、IHヒーターが鍋に与えた熱量の20%が周囲の空気を暖めることに使われる(逃げる)などしてロスするということです。
ロスしてしまう分を考えて、IHヒーターが鍋に対して加える熱量の必要量は、
180000(カロリー)÷0.8 =225000(カロリー)
です。そして、この熱量をエネルギーに換算します。
1カロリー=4.2(ジュール)
という換算で、単位をカロリーからジュールに変換します。
225000(カロリー)×4.2=945000(ジュール)
ここで、さらに考慮しないといけない要素があります。電気機器は、必ずエネルギーをロスします。IHヒーターも、電源装置から供給した電力の全てが鍋の加熱に使われる訳ではなく、ロスがあります。このロスを考えて、電源装置からIHヒーターに投入する電力を考えます。このロスがどれだけにするのが妥当なのかよくわかりませんが、20%のロスとします(実際はもっと効率はいいはずです)。
したがって、IHヒーターに投入する電気エネルギーは、
945000÷0.8=1181250(ジュール)
が必要ということになります。
この「ジュール」という単位は、「1ワットの仕事を1秒間加えるだけのエネルギー」です。ここで電気の世界でおなじみの単位「ワット」が出てきました。何となく電気の世界に近づいています。
次に考えなければならないのは、「どれくらいの時間で2リットルのお湯を沸かすか」です。早ければ早いほうがいいに決まってますが、自宅で2リットルのお湯を沸かすことを考えても15分から20分くらいかかっちゃいますよね。安定して100ボルトや200ボルトの供給ができ、出力も高いIHヒーターでもそれだけかかるのです。しかし、30分以上ってのはちょっと長くかかりすぎでしょう。そこで、30分で沸かすことを想定することにします。
30分間(=1800秒)で、1181250ジュールのエネルギーをIHヒーターに投入する場合に必要な電力を計算します。
(ジュール)は(ワット)×(秒)ですから、
1181250(ジュール)÷1800(秒)=656.25(ワット)
となります。つまり、
IHヒーターに、約650ワットの電力を約30分間供給し続ければ、2リットルの水を10度から100度くらいまで加熱することができる
ということになります。あくまでも、計算上ですが。
したがって、インバーターの性能は、650ワットを30分間安定して出力できることが必要です。
だからといって、650ワットの出力のインバーターを買えばいいかというとそういう訳ではないようで、連続出力をするならば、1000ワット~1300ワットくらいの機種を選ばないとダメらしいです。
また、このインバーターもバッテリーから供給された電力を全て出力できる訳ではなく、やはり20%くらいロスをします。ですから、バッテリーからインバータに供給する必要のある電力は、
650(ワット)÷0.8=812.5(ワット)
となります。
インバータの容量が1000ワット~1300ワットクラスとなることがわかったところで、次に、このインバーターがどういうものか調べました。このクラスになるとシガーライターのソケットから電源を取るということはできません。
車のバッテリーは12ボルトです。電力(ワット)は電圧(ボルト)×電流(アンペア)ですので、
812.5(ワット)÷12(ボルト)=67.7(アンペア)
となります。この電流量はすざましいもので、下手な配線をすればあっという間に配線が焼け、車両火災につながります。
配線の電気抵抗を減らすには、
断面積が大きく、かつ、短い配線
が鉄則です。つまり、バッテリーのすぐ横にインバータを置き、太い電線でつなぐことになります。67.7アンペアの電流が流れる配線は、せいぜい50センチくらいに納めるべきです。そうなれば、インバータはエンジンルームの中に置くことになりますが、あまり大がかりなイジリ方はしたくありません。エンジンルームに入れるとなると固定方法や防水など考えなければならないことが色々とあって大変です。
そして、何よりも
バッテリーで、インバータに67.7アンペアの電流を30分間供給できるか
ということが問題になってきます。
車のバッテリーが放電しすぎれば、エンジンの始動ができなくなります(つまり、バッテリーが上がった状態)。これではダメです。
エンジンを回した状態であれば、オルタネータで発電できますので、バッテリーの電流とオルタネータからの電流を電流供給源として使えますが、あまり大きな期待を持ちたくはありません。うちの車は寒冷地仕様でもありませんし、通常の走行であってもカーナビやドアクローザーなどで電力を使ってますので、元々オルタネータもバッテリーもあまり余裕はないはずです。
そこで、IHヒーター専用(インバータ専用)のバッテリーを用意し、そのバッテリーからの電力供給だけで30分間動かすことに方針を決めます。そう割り切れば、バッテリーとインバータなどを1つのボックスに納めてラゲッジスペースに置くこともできます。なお、このバッテリーの充電については、後で改めて考えます。
では、67.7アンペアの電流を30分間供給するために必要なバッテリーとは、どういうものかを調べてみることにします。
バッテリーのタイプとしては、充放電の繰り返しに強いディープサイクルバッテリーとなりますが、バッテリーの容量の表示は時間率容量が使われています。
時間率容量は、バッテリー容量の時間率分の1の電流で放電した際に、10.5Vまで電圧が落ちるまでの時間と電流の積(アンペア・アワー)なんだそうです。
で、今回の要件である67.7アンペアを30分間供給するという前提だと、
1時間率で67.7(アンペア・アワー)のバッテリーならば、30分間使ってもまだ50%程度の残りがある
ということのようです。バッテリーは一般的に過充電、過放電はよろしくないため、余裕を持たせて2倍弱程度の電流容量で考えることにします。
ちなみに、5時間率だと、容量の5分の1の電流で5時間持つ性能ですから、
67.7×5=338.5(アンペア・アワー)
のバッテリーなら5時間持つ計算です。もちろん、こんなにすごい容量は必要ありません。おおざっぱに、5時間率で100アンペア・アワーのバッテリーの1時間放電容量は65アンペア・アワー程度が目安のようです。もっとも、このあたりはバッテリーごとの放電特性によるので、あくまでも目安です。
つまり、1時間率で70アンペア・アワー、5時間率で100アンペア・アワーのバッテリーがバッテリー選択の目安となりそうです。
(続く)
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